夜のピクニック



 今さら感が漂いますが、読み終わったので一応紹介というか感想と言うかそんなものをアップしてみようかと。出来るだけネタバレは防ぎたいと思いますが流れの都合上話の筋が見え隠れしてしまうかもしれないのでこれから読む方は注意して下さい。
あと長いw




 あらすじについて簡単に書くと、或る高校には「夜行祭」というイベントが毎年催されていて、今年最後の夜行祭となる3年生達は複雑な思いを抱えながら、二度と来ない一歩を踏み出してゆく、という感じでしょうか。
 
 かなり話題がずれますが、昔筑紫哲也さんがロードムービーで過去との往復が無かったらソレは凄い、力技だ、みたいなことをNews23で言っていたのを聞いた事があります(記憶違いでしたらすいません)。これはどういうことかと言うと、人が旅をする、その事をテーマにした作品では、過去と今の繋がりから作品に緊張感をもたらすという手法は手垢が付きすぎている(ゆえにつまらないとぼくは解釈しています)、ありふれたやり口と言うことですね。
 
 そういう意味で言えば、この作品も過去と現在の往復が物語りを前へ押しやるという点ではオーソドックスです。そこはまず注意して良いです。小説中毒者にとっては新鮮味には欠ける。じゃあ、この小説のどこが魅力なのか。そしてどのあたりイマイチなのか。
 
 まず、一行一行しっかり感情の機微を拾っていることかなと自分は感じました。一言にかける重みは流して書いているのでは絶対出てきません。清涼感のある言葉選び・・・といえば良いのか・・。もしこの文章の運びだけでノレた人は一気にこの本が読めるんではないのかなと。
 
 もう一つは「人が死なない」けど感動はある、というところでしょうか・・。これはかなり自分語りでかつ余談ですけど少しだけ。今小説では「セカチュー」が最大のベストセラーです(っていう時期は過ぎたかな・・・)。脊髄反射して泣くみたいな感情の消費にもの凄い需要がある事がはっきりしたと。そしたらどんな読み手も作家も「セカチュー」を意識しないではいられない、小説は「ポストセカチュー」という期間なんだと勝手にボクは思っているんですが、敢えてセカチューのベタ戦略を回避しつつ、でも感動できるというのはかなり至難な業です。セカチューのフォロワーはいっぱいいますしね。そうした(かなり偏った)視点に立つと、この小説の気持ちよさは結構際立っていると思いました。高校最期のイベント、話したい人、受験、将来への不安などなど、色々な思春期の要素が並べられますけどそれを上手に形にしてくれています。直接そういう経験が無かった人でも、「あーこんなのあったなぁ」という既視感を、絶えず文章が滲ませていてとても良いです。
 
 でもノレない点もありました・・・。


 例えば、この本は基本的に2人の語り手がいますけど、2人が夜行祭の全体の印象を描き出してくれることはありません。彼らが問題にするのは結局自分の気持ちの変化だけなんですよね・・・。「夜行祭」ってなんだったんじゃ?と読み終わってからボンヤリとした印象しか残りませんでした。上手く言えませんけど、風景が見えてこないというか・・。それと物語のターニングポイントはいくつもあったけど(出発→休憩→仮眠→自由歩行)、主人公2人のモノの感じ方がいつも同じペースでまっすぐ続いていくので、そこは単調だな、と。
あんまり気持ちに揺らぎが無い2人ですよね。だからカタルシスとは無縁の小説です。逆にそこがこの小説の上手いところでもありますけどここは嗜好性がかなりからみます。

 
 まぁとりあえずこんなところで・・・・。

 
 読み方というかタイミングですけど一日長い時間をとって一気に味わって下さい。
ミステリーやエンタテイメント系の小説と違って、ここが区切りが良い、というポイントを見つけるのは結構難しい本です。ですから「この日たまたま空いちゃったよどうしよう」という時間があったらこの本を開いてみるのがベストかなぁ・・と。そんなに時間はかからずに読めてしまいます。早い人なら2から3時間くらいかな・・?昔を思い出したい人、刺激を浴びすぎて疲れた方、オフの日に部屋でゆっくりと読むのが良いかと。

 
 あんまりレビューになってないなぁ・・。