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バカのための読書術 (ちくま新書)

バカのための読書術 (ちくま新書)

学校のレポート用の本を探していた時に購入。

前置きになりますが、こうした文型向けの読書術や知的生産方法は本当にいっぱいあるんですが良くあることとして何故か方法論ではなく著者の自己主張に終わってしまうことがありまして、大塚英志の「キャラクター小説の作り方」キャラクター小説の作り方はその傾向にある本でした。まぁ大塚さん自身の著作にハウトゥーを学ぼうとする事自体に問題があると言えばそれはそうですが・・・。
さてこの本はこんな目的で書かれています。

バカは何を学問の中核として読書に臨んだらいいのか

そして想定される読者とはこのあたり。

いちおう、学校は終えてしまって、しかしただのベストセラー小説を読んで生きているような人生に不満で、けれど難解な哲学書を読んでもわからない、というような人たちだ。

立ち読みで、ココまで読んでこの本を買うことに決めました。どうも最近の本は看板に偽りありと思しきモノが多くてちょっとした吟味は必要なので立ち読みは絶対に必要です。著名人が新聞のラテ欄で大絶賛しているのをネットでとりよせてダメだった!金返せ!という事は毎日のように繰り返されている悲劇なのです(皆さん、立ち読みをしましょう!)。
それと上にある通り著者が想定している読者というのがしっくりきました。僕自身はまだ親元で大学生という身分ですけれど、昨今あまりに本の量が増えていて、自分が何を読みたいのかすらわからないまま流行を追い求めるような環境は社会人に限った話ではないですよね。
話が飛びました。では「バカ」(というか時間とお金が限られている人)はどうしたらよいのか。彼の出した結論は、「歴史」である、ということです。では何故歴史なのか?本文にはこうある。

まず、蓄積がものを言うから、年をとることを恐れずにすむ、という点である。たとえば数学や物理学では、大発見をした学者は、若い時にしていることが多い。(中略)つまりこういう世界では、持って生まれた才能と、若い時のひらめきが物を言う。だが、歴史はそうではない。歴史のあれこれを知っている子供などいないのだから、ガキに大きな顔をさせずにすむ。しかも、歴史にある程度通暁すれば、頭のいい学者のでたらめも見抜けるのである(中略は引用者)。

その例として彼は「朝日新聞に登場するような偉い先生」でもチョンボをする事を紹介し、それとて歴史に関する少々の知識で見破れるのだといいます。なるほどねぇ。
で、実際の中身ですが使える部分が多くて参考になります。特に、第三章「入門書の探し方」、第四章「書評を信用しないこと」では、「読んではいけない本」ブックガイドが実用性が高いです。またキモである第五章「歴史をどう学ぶか」も徹底した親切設計。

とにかく、司馬遼太郎だろうが大河ドラマだろうがマンガだろうが、何を使ってもいいから歴史の大筋は知ってもらいたい。(中略)ロベスピエールもボストン紅茶事件も知らずに、「子供」という概念は近代になってできたもので、などと言うのは、若いころの私が、カントもハイデッガーも読んだことがないのに、デリダドゥルーズにくらいつこうとしたのと同じ。

そうして紹介される本も司馬遼太郎城山三郎の文庫など、すぐ手に入るものばかり。ここにあるだけでもお腹一杯ですけどね。というわけで、漫然と読書するのに飽きた方、「ガキに大きな顔をされ」たくない方は、頭安めに。本を読むのには2時間半くらいが目安です。