赤×ピンク (ファミ通文庫)

赤×ピンク (ファミ通文庫)

渋谷のbk1で。
買ったらキツイ視線をうけた。それはともかく桜庭一樹さんの本、2冊目です。相変わらず宣伝文句と内容にズレを感じました。背表紙はこう。

彼女たちが毎夜働くのは、廃校の校舎を改築した非合法ファイトクラブ。それぞれ、秘めた思いを胸にたたかっている―。驚天動地のラブ&アクション!

んでもここらへんは推定少女を読んだ時に理解。“まゆ、ミーコ、皐月、彼女達は夜な夜な繰りかえされる格闘の中で、何を選んだのか?選び直したのか?静かで、熱い物語”ってな感じに自分なりにはまとめてみた。「ラブ」にリアリティが無かったりするから彼女はそこ=檻の中にいるのだろうし。「アクション」はありますよー。あとがきみたら実際桜庭さんは空手やったりバーベル上げたりしてるらしい。で、推定少女もそうだったけどこの小説も別にエンターテイメントしようとしているわけでは無いですな。もっと身近なテーマをとりあげている。一人目のまゆは、「ただ、うっかりこの世からいなくなってしまいそうな弱さ」を抱える21歳だし、ミーコは「消費されて、捨てられる」「おもちゃ」と自分を規定しているし、皐月は「じつは女はみんな本当にバカである」と考える女である、というふうに。そして、そう考えるの女性はみんな「親」や「家庭」という関係性から脱落していった人達ばかり。こうしてまとめてみるとむしろポップな純文学(造語)なんだと思う。こういう種類の小説は好きで、文章のノリも良かった。まゆのエピソードのラストが・・とか細かいところは気になっちゃうけど、ミーコの話も皐月の話も短い尺でおさまっている。まゆは初めて会った男とケッコンしちゃうし、ミーコはSM女王を辞め、他人の要求に応えるのではなく、自分の欲求に忠実になり、そして皐月は「男」である自分に目覚める。何かライトノベルじゃないみたいだ。はてな内をみてたら
http://d.hatena.ne.jp/shinosuke/20050714/p1

非リアルな設定の中に、リアリティのある鬱屈した悩みを盛り込んで、ライトノベルよりも純文学に近い雰囲気。徹底的に女性が憂き目にあい、いろんな意味で男性の犠牲にされる(と、勝手に思っている)いわゆるセカイ系と違って、女性の生き残る道の模索が中心になるのだけれど、主人公が女性というだけで別に性差的な意識はたぶんない。もう少しどろどろした肉体関係とか、直接的な行為とかに及ぶと暗澹としてネガティブ・スパイラルになって、生きるための大変さがにじみ出てくるんだろうけれども、ファミ通文庫じゃそこまで無理かなぁ。ライトノベルの裾野に収まりきらないで、チャレンジして欲しい。

そうだなぁと思った。カタルシスは要らないんだけど、素材が面白いだけに思いっきり純文学に振ってみたら凄いモノが飛び出してくるはず。桜庭一樹さんにはこのラインを継続して欲しい。やはり、男性読者に対してサービスする部分もあるんだけど、それならソレ目的で別の作品に出来るんだろうから、萌え、とか、イラストとかに関係無い地点で書いて欲しいよなぁ。そういやこの前の押井守についてダメダメです、みたいにしたけど、アレは多分自分が押井監督ファン過ぎて全然冷静じゃなかったのかもなぁ・・。全体としては今でも印象は変わらんけど。赤×ピンク、推定少女と同じラインですが、日常の感覚に敏感な作家、誰かな・・・江國香織とか読んでいる方ならあっさりなじめるかなぁ。いまいち自信ないです。高橋しんの表紙でまゆハァハァな展開では、無いのでそこだけご注意。所要時間は2時間、早い人は一時間半くらいで読める、はず。