エコノミカル・パレス (講談社文庫)

エコノミカル・パレス (講談社文庫)

あらすじ

34歳フリーター、「タマシイのない仕事はしたくない」と、年下の同姓相手は失業中。エアコンは壊れ、生活費の負担は増えていく。どんづまりの生活を変えたのは、はたちの男からかかってきた「テキ電」―私はちゃちな恋をした。生き迷う世代を描き、フリーター文学とも呼ばれた著者の転換点となった作品。(裏表紙より引用)

倫理的な作品なんだと思います。ここにはロマンも何もない。ただただ金に駆動されてしまう主人公の私がドキュメンタリーのように追われていて、救いが無い。出だしだけ少し抜書きしてみると

冷凍食品はお好み焼き、メーカーは加ト吉、おにぎり2個、いくらとチキンマヨネーズ、ペットボトルの冷たいお茶が切れている、アーモンドチョコレート、素麺のつゆ、単4電池4個、発泡酒ロング缶3本、というのが、携帯に電話をかけてきてヤスオがたのんだ品々で、私はそれを復唱しながらコンビニエンスストアの店内を歩く。

とこんな感じ。全編に渡ってひたすらこの調子で彼女が何をいくらくらい買ったかが記述されている。これがフリーター文学かどうかは知らない。ていうか本当にフリーターで角田光代を読んでいる人がどれくらいいるのか知らないけど、もう生活が苦しいとかそういうレベルではなしに食べるために生きることを押し通すっていうことは、もう葛藤とか虚脱感すら通り越すんだという作者の貫徹した意思が伝わってくる。故にこの作品、ひたすらにドライな文体で執拗に書き込まれている。そしてひたすら希薄な感情が淡々と記述されるだけ。読んでいて沈むことうけあいなんで、気持ちの余裕がある時にどぞ。対岸の彼女とこの作品を改めて読み返してみて驚くのは、全然作品のトーンが殆ど変わらないこと。もちろん対岸の彼女は気持ちの良いラストではあるんだけど、あの話の裏に、エコノミカル・パレスのような世界が潜んでいることが、読んでる側から見てちゃんと想像できるんですよね。これはちょっとびっくりした。読んだ時間は2時間くらい。

リンク

本を読む女。改訂版

男が情けないというか、やっぱり男って経済観念ないのかねえ。

ネットでみかけた面白かった感想。やっぱりそうなんですかねぇ。