Banana fish another story (小学館文庫)

Banana fish another story (小学館文庫)

友人に借りて読む。以前文庫版の5巻くらいで読むのを中断してしまい最近になってようやく全巻読み終えました。
あらすじ

謎の合成麻薬「バナナフィッシュ」。ストーリートギャングのボスであるアッシュ・リンクスは偶然この麻薬のサンプルを手に入れることにより、ベトナムで何故兄であるグリフィンが発狂したかを知ることになる。偶然ストーリートギャングを取材に来た日本人の英二と共に「バナナフィッシュ」の謎を追ううちに、マフィア、国家をも動かす大きな野望の渦に巻き込まれてゆく。
BANANAFISH - Wikipediaより引用)

wikiのまとめ最高。とは言えもう少し膨らませておかないと話が見えないと思う。本作バナナフィッシュの主人公アッシュ・リンクスは美女と見間違うような容姿端麗の17歳。しかしその容姿が災いして8歳のころにゲイにレイプされそうになり相手を射殺している。刑務所から出所した後も、ニューヨークのイタリアマフィアによって男娼にされ荒んだ青春期を過ごしていた。そこに日本からやってきた高校生奥村英二との出会いと、謎の薬物バナナフィッシュの名前があるるみに出るところからストーリーが始まる…といった感じです。(以降若干ネタバレ)
感想
設定としての性と麻薬と暴力にはとりたてて興味がかきたてられる事は特にありません。文庫版と単行本では大分テンポが違うのかも知れませんけど、やっぱり山場を置くのが上手いのと、結構難渋しながらも作者がアメリカ政府やマフィアの抗争といった大ネタを消化しきったところが魅力です。連載している時に読んでいたわけではないのでその時どんな目線でこの作品が消費されたのかは予想の粋を出ませんが、そういうテンポの良さがまず面白いといわれた所以なのではないかと。

何故こんな回りくどいことを書くかといえば、設定が古いからです。しかも古さというのが、途方もない100年前とかではなく、ちょっと前だから余計に古いと感じてしまう、あの感覚。絵も最初の頃は大友克洋みたいだし(徐々に脱出します)、今ならアメリカがコカインを使用して中米の軍事転覆を目論むという筋書きも難しい(今はコカインの変わりにウィンテルとアップルがコカインの役割を担ってるんだから)。

漫然と読んで面白いところは、アッシュ・リンクスって実はお姫様役なんだというところ。考えてみるとアッシュってこの作品を通してずっと誘拐、脱出を繰り返している主人公なんですよ。そして、自力で逃げるときもあれば仲間が助けに行くときもあるけど、いっつも周囲は心配で仕方がない。アッシュはミンナに愛されて仕方がない!まわりの男性の視線があるからこそ、この作品が設定を抜きにしても楽しいものにしている。暴力的で汚れたお姫様です。そういう視点で読むとなかなか面白いと思います。絵に萌えない気もしますがそれはそれ。淡白気味な線が好きな人で、ストーリー重視なら読めるんではと。

また月龍もゴルツィネも英二も結局アッシュを自分の好きには出来なかった点で同じなわけですが、それがラストをより象徴的なものにしているのではないでしょうか。安易に主人公がああいう最後を迎える作品はとても多いですが、嫉妬も支配も愛情も全部同じ場所においてしまうことが凄く新鮮で、好きです。それまでの三人とアッシュの関係の緻密さがそのラストを引き立てているところをみると意外と少女漫画してますね。 

文庫版全11巻の他、アナザーストーリーという短編があります。これも中々。

関連
BANANAFISH - Wikipedia

吉田秋生 - Wikipedia

404 Blog Not Found:天才漫画家、吉田秋生
小飼弾さんの吉田秋生評。こういう文章を書いてもやっぱり上手いですね…。