パプリカ (新潮文庫)

パプリカ (新潮文庫)

先週から始まった映画「パプリカ」の予習。筒井文体が久々で慣れるまで時間がかかったけど何とか読み終わる。今敏のアニメはパーフェクトブルーしか見てないけど、ホントこういうの好きなんだな…。

あらすじ

精神医学研究所に勤める千葉敦子はノーベル賞級の研究者/サイコセラピスト。だが、彼女にはもうひとつの秘密の顔があった。他人の夢とシンクロして無意識界に侵入する夢探偵パプリカ。人格の破壊も可能なほど強力な最新型精神治療テクノロジー「DCミニ」をめぐる争奪戦が刻一刻とテンションを増し、現実と夢が極限まで交錯したその瞬間、物語世界は驚愕の未体験ゾーンに突入する。
Amazon.co.jp: パプリカ: 本: 筒井 康隆より引用

カンソウ
筒井康隆というと、今でも一部に根強いファンがいるけどその理由の一端を見た気がします。全体としては、きちんとエンターテイメント作品になっているし読むのにつまづきを感じるポイントは殆ど無いにも関わらず最後までもやもやする。

いくつか理由があると思うけど、一番重要なのは作者自身がどこかで精神分析そのものをを引いた目で見ているからではないかと。例えば序盤に説明がある、スキャナーやリフレクターなどのSF的な道具仕立ても患者の精神状態(主に夢)を映像的に可視化出来るという設定。これが全編を通じて重要な意味を持つのだけど、コレなんかはフロイトの夢判断を逆手にとっていて実に憎いなぁと思ったりする。そして、作品が進む中で実はいちいちひとつのイメージに強い意味付けをするんではなくて、逆にイメージ自体が文字通り作品全体に氾濫し多い尽くす事で精神分析という枠組み自体がどんどん壊れていく。それが快感だし、面白いのだけど作者の手のうちでころがされているような気になって一般的なエンターテイメント作品が与えてくれる爽快感はほとんど無い。だがそれが良いですね。ちょっとつきはなされた感じが。ファンはやっぱりそこが好きな理由だったりするんでしょうか。これに比べると時をかける少女はまだまだ難易度が低めではないかーと思いました。もちろん作者の含意をどう掬い取るかで重さはどんどん変わっていくのですが。

熱心に筒井康隆を読む人ではありませんが、なかなか楽しめました。あとがきの斎藤美奈子さんの解説はちょっとしんどいです。

関連

パプリカ - Paprika -
公式サイト。林原めぐみの声を聞くのも久々になりそうです。

今敏監督インタビュー

ヴェネチア国際映画祭の話など。