シティ・オブ・ゴッド【廉価版2500円】 [DVD]

シティ・オブ・ゴッド【廉価版2500円】 [DVD]

最近ライトノベルから遠ざかっている気がするんだけど気にしない。前から見たいと思っていたブラジルのギャングスターの映画を見た。2003年公開という事でおいしい時期は過ぎているんだけど、かなり面白い映画だった。

ギャングスターをテーマにした作品は割合見ている方で、ゴッドファーザーやらスカーフェイスやら日本で言えば仁義無き戦いもあったような気がする。あとラッパーの2PACが出演したジュースというのも見た。あれはあー今で言えば50CENTのゲットリッチオアダイトライングみたいなヤツで、うん、まぁラッパーのプロモーション活動の一環として見れば良いんじゃないかな、的なアレでした。

で、カンソウですが何だろう…ギャングスターものっていくつか系統分け出来そうな気もするんだけど全体的に共通してるのは映画を見た後に肩でいからせて歩かせる気分にさせるものが多いと思うんですよ。それに敗れ去るモノ達の悲哀というモチーフが加わるとただ暴力的じゃなかったんだぜ、という空気も加わって大変よろしい。あと凄く舞台になっている国の雰囲気が色んな面で重要かと思われます。例えば、ゴッドファーザー2はイタリア移民の家庭が保守的にアメリカでカトリック教徒としての信仰を、退廃や贅沢も交えつつ、ある面で守っていたりしてこれが映像的なおいしさやストーリーの緊張感にも繋がっていきます。

そして、一番重要なのは、ギャングスターものは基本的には男性対男性の生存闘争のある局面を美化しているのが大抵な特徴なわけで、女性にとってはうっとおしいに違いないのですが、それが未だに細々とではありますが量産される理由なんでしょうね。キル・ビルはその当たりを徹底的にパロディ化した映画だと思います。

そういう筋でいくと本作は、自分の個人的分類からは大分かけはなれた陽気なギャングスターストーリーになっていてそれがかなり面白い。とにかく、画面の上で起きている事は悲惨過ぎる(戦争映画を除けば人の命の価値が最も安い映画)。警察は一般市民を容疑者と間違えて射殺して所持品をかっぱらうし、「神の街」(映画のタイトルになっているブラジルはリオデジャネイロのスラム街)の子供は学校で勉強を習う前に窃盗と殺人を覚える。多分日本じゃ人に意識的に暴力を振るう事すらまだ覚えていないような自分に。ダンナは間男に寝取られた妻を見た瞬間に殴り殺す。凄いなぁ。感情と暴力の間に挟まるものが何もない。

だが、それも良く練られたストーリーとテンポの良い運びが憂鬱にさせるのではなくて映画をきちんと娯楽としてまとまめてるので寝る暇はなかったです。その時点でも損はしない。まぁショッキングなシーンの連続でなりたっている作品なので、嫌いな人は見ないにこしたことは無いと思いますが。

自分としては娯楽であるというポイントに加えて、登場人物の多様な表情に魅力を感じました。とにかくどの人物もある時はとてつもなく残酷であり、次の瞬間には緩んだ表情を見せたりする。監督はブラジルで実際に「神の街」の住民からエキストラを選んだそうですが、それが良かったのかなぁ、リアルというよりは凄く人間味を強調している気がしました。

この映画のキーマンには「リトル・ゼ」という、成り上がりで残酷な若者と、「リトル・ゼ」によって身近な人を傷つけられた「二枚目のマネ」という真面目な元軍人の二人がギャングスターとして登場するのだけど、特にこの二人にそうした多様な面が集約されていると思う。「リトル・ゼ」は普段から粗暴でおよそ人が嫌がることなら何でもするような男だが、親友が死んだ時の情け無い声と冗談を言うときの彼の表情は優しい。それに対してマネという男は「罪も無い人を殺さない」とギャング達を前にして言うくらいの硬派ぶりだが、いざ銀行を襲う段になるとあっさりとその掟を破ってしまう。しかもそれに頓着した感じでもない。そんな矛盾がやすやすと飲み込まれてしまうほどの力がこの映画にはあると思った。

映像的に印象深いシーンも沢山ありましたが、何か長くなってきたのでヤメにします。酒に酔いながら大きい画面で1人用の映画っぽいです。