市川崑物語

新宿ガーデンシネマにて。通っているゲーセンにポスターが張っていたので気になって月曜日が休日という社会人二人を連れ立って見に行く。観客は僕たちも含めて10人程度だった。

黒字に白抜きの文字の細かいカットに岩井俊二のモノローグをのせ、市川崑作品や彼の写真を交えながら91歳にして現役の映画監督である彼の半生を描いたセミドキュメンタリー。

市川崑という人興味深い人生を送っていたのには同意したい。例えば後の東宝であるJ.Oスタジオにおいてアニメーターとして勤務していたことや、戦争の最中人形劇などを製作していたことなど。また、脚本家であり妻であった和田夏十が彼の映画に占めていた重要性、などは彼の映画をより楽しむために知っておいて損は無いかもしれない。

だがそれは史実であって、テキストにすればこと足りてしまうんではないかと言うのが終わった時の感想。映像的には岩井俊二市川崑に対する散文を、まさに「読まされる」感じでどうも盛り上がらない。ああこれはマズイと思ったのは市川崑作品に出てくる男性像と女性像を岩井俊二が分類し出した時だ。これって映像作品の批評としてよろしくないんでは無いかとも思ったがまぁ岩井俊二のファン層ならそうだねーってなるのかな。知らない。個人的に映像の批評は映像でして欲しい。テキストに起こして出来る批評は、その対象が映像だったり音楽だったりする場合、感想以上のものをひねり出す事が極めてキツイし。良いところもあった。映画の名前は忘れたけどピンクの日傘を持った女性がそれを開き、歩き出す一連のシーンはレイアウトもすげーと思ったし色使いも瓦が鉄色で桃色の傘という対比でかなり惹かれた。だが、やっぱりその素材のまとめかたにどうも問題があったらしい。観終わった後は煙草がすすんだ。理由は不明だ。

あと同伴した人達には誘った手前申し訳なかった。

だが、岩井俊二に批評精神が宿った素晴らしいドキュメントを撮影されたらそれも逆の意味で(次の映画がつまらなくなりそうな、という意味で)怖いので、まぁ良いですか。