恋愛の超克

恋愛の超克

もてない男―恋愛論を超えて (ちくま新書)

もてない男―恋愛論を超えて (ちくま新書)

非モテ系?「恋愛の超克」は、近代超克が色んな学問で叫ばれているけど、何故近代の落とし子である「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」は克服されないのか?という問いを立ててその周辺の話をまとめた本。「もてない男」は、恋愛は誰にでも出来る事ではないのではないか?という話。
毎回小谷野敦の本を読んでいて驚くのはとにかく資料を読んで誰が何を言ったか執拗に追いかけるところで、上の2冊の本もそうだった。「もてない男」では、「童貞を読むためのブックガイド」「孤独を癒すためのブックガイド」などがあり、コレを全部読むの無理!と思うけどアーカイブとして非常に助かる。さて肝心の本の話だけど、「恋愛の超克」の中で言われる、「恋愛」から「結婚」、そして「セックス」という三位一体の近代恋愛観について語っているところなどが特に面白い。売春論では、「売春を、親として薦められる仕事と思えないなら容認するな」という彼の主張の元に、文芸時評をまとめてある。「もてない男」は、別に童貞だとか恋愛敗者のことではなくて、「好きな女性に相手にしてもらえない」男をとりあえずそう呼んでで、古今の文芸作品や映画などを俯瞰しながらフェミニズムに対する違和感(主に上野千鶴子に対する違和感)や、男女関係についてありがちな事を綴ってある。綴ってある、という割には小谷野さんの肉声に近い部分を感じるのは、ところどころ彼自身の体験が書かれているためだろう。ただ食いたりない感じがするのはもちろん読解能力が低い僕のせいもあるけど、引用されている話が多岐に渡るのでジェンダー論とか売春論とかに興味があって読んでいる人は良いのだけれど、そうでないと少し散漫な印象を持つかも。別の著作、「男であることの困難」を参照するとより理解は深まると思うのだけれど。特に「恋愛の超克」は、雑誌連載時の原稿をまとめたモノなので、よりその傾向が強い。これは著者の責任ではなくて、編集力の問題か。「もてない男」はそれほどでもなくて、恋愛至上主義から少し観点をずらしてみるにはいいかも。にしても上野千鶴子の「マスターベーションして死んだらいいと思います」ってセリフ、酷いナァ。フェミニストが男性に優しいというのもヘンだけど、死ねって。