犬狼伝説 紅い足痕 (100%コミックス)

犬狼伝説 紅い足痕 (100%コミックス)

ケルベロスサーガの新エピソード。と言っても知らない人には何のことやらなので少し説明を。もともとは押井守監督の「紅い眼鏡」という、ドイツに占領された架空の日本の戦後を描いた映画が全てのことの発端。その戦後史で押井監督は、首都の治安を警護する「首都警察」という特殊部隊の反乱とその後、というストーリーを描いた。描いたんだけど、実際は押井アニメの所謂「ダレ場」を無限に引き伸ばし、千葉繁氏がドタバタと逃げ回るという実験映画に仕上がってしまったため、出渕裕氏のプロテクト・ギアデザインやその世界観だけがファンの妄想をかきたてるという事態に。もっと詳しい話は以下を参照。
犬狼伝説
ケルベロス・サーガ
今回の単行本は上の映画冒頭、千葉繁こと都々目紅一が台湾に逃亡したその後という話。巻冒頭では半田副隊長の名前や、政治劇らしき話もあるけど全体としては逃避行と犬を廻る内省が長々と続く。ケルベロスファンが待っていたプロテクト・ギアのアクションは今回もあまり多くはない。実写2作目の、「ケルベロス・地獄の番犬」で押井監督が実験した犬目線で街を撮るシーンがあったけど、あれを今度は人間の目線でやったような。それと恒例の設定微調整があり、プロテクト・ギアのフェイスマスクのデザインが完全に犬になってしまったことと、新キャラとして黒崎なる人物が出てくる。現在の逃避行と首都警時代の話を交互に挿入していけばそれだけで新規読者も増えるんだろうけど、それをしないのは流石押井守。彼にとってはもうケルベロスの話はどうでも良いのか。あとがきにはこんな押井監督のつぶやきも書いてあった。

やや複雑な心境でしたが、始まってしまったものは仕方ありません。早く完結して欲しい―祈るような気持ちでした。

何てなげやりな!

でも、こうして世に出たのですから、もはや何でもいいでしょう。

そんな倦怠感をまさに感じた。