あらすじ

OVA23話、TVシリーズ47話、劇場版映画4本、さらにマンガ、小説とあらゆるジャンルに展開されたアニメ・シリーズ「機動警察パトレイバー」の基盤となったOVA全7話。脚本を伊藤和典が執筆、押井守吉永尚之が監督を担当している。
特車二課第2小隊にレイバーと共に配属された隊員たちは個性派ぞろい。自分のレイバーにアルフォンスと名前をつける女性隊員泉野明、発砲したくてたまらない熱血漢・太田功、実はレイバー製造で有名な企業の御曹司である篠原遊馬、心優しき巨漢山崎ひろみ、サラリーマン出身の進士幹泰。そんな彼らが後藤隊長や整備班の榊班長らに囲まれて成長して行く物語…ではあるのだが、この初期OVAでは、登場するキャラたちのドジが目立つエピソードが多かったりする。そんな中、後藤の旧友である自衛隊の甲斐がクーデターを起こす第5、6話「二課の一番長い日」の緊迫感溢れるタッチが強烈な印象を残す。(斉藤守彦
機動警察パトレイバー アーリーデイズ VOLUME 1. - はてなダイアリー

ホントはテレビシリーズを借りようとして池袋のTUTAYAに行ったのに1巻が貸し出し中でオイオイ誰が見てるんだとおもったんだけど、5巻と11巻とかもコマ切れに借りられており、以外と今でも人気あるのだなぁ・・・と再確認した。今回借りたのは動くパトレイバーとしては最古の初期OVA

カンソウ

1988年4月から12月にかけて発売された作品。とにかくレイバーが出てこない。その代わりにダラダラとした新米警官達と東京湾に島送りされた新設部署とは名ばかりの閑職を押し付けられた中間管理職との悲喜こもごもが描かれていて面白かった。

…と言って終えてしまうのも何だか僕の2時間は何だったんだという事にしかならないのでもう少しだけ。アニメ技術的に云々というのは正直分からないしあんまり注意も払っていなかった。強いて挙げれば、思い切りの良い色の使い方が面白い。第4話「Lの悲劇」における夕焼けの中特車2課のメンバーが写されるところと、事件のリピート映像とか。けど、それは作品独特のそれというわけでは多分無くて当時のアニメ全般に言えそうだし、しかも特別80年代後期から90年代初期のアニメを比較したわけじゃないから断定も出来ないしね。

その代わりとしては、押井守の作品に繰り返し現れる「モラトリアム」「大状況と小状況」という要素は自分的に抽出出来たような気がする。

モラトリアム

パトレイバーにおける「モラトリアム」感覚というのは、押井守という系で見てしまうとうる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー [DVD]からパトレイバーまですっきりと連続感を持ってしまうけど、何かそうではないんではないかとずっと個人的に思っていてそれはつまりゆうきまさみの存在が案外大きいんではないかなぁと。それで、今回見て思ったのは、特にパトレイバーという作品において見出されるモラトリアムというのはゆうきまさみ的というより…高橋留美子ゆうきまさみなどの当時の少年サンデー文化に見出されるんではないか、と。大体押井がモラトリアムを割合全面に押し出して来た作品というのは本シリーズを除くと、後は西部新宿戦前異常なしくらいしかなくて全体にそういう雰囲気が底流しているのはどちらかと言えばゆうきまさみだから、ではなかろうか。あーでもこれは、押井の作品の表面にそういう側面が無い事をもってそういっているだけであって(だから作品論ではなくて作家論に陥っている)彼個人の資質としてそういう感覚が親しいんではと言われれば一瞬で吹き飛ぶ話だな。まぁいいけど。

大状況と小状況?

特車2課の特徴としていっつも暇を持て余しているというのがあるけど、これは本シリーズでも健在。第2話「ロングショット」でレイバーがニューヨーク市長来日時の警備に借り出されるシーンの篠原遊馬の暇過ぎて寝そうというシーンが優れて印象的。バビロンプロジェクトに反対する団体からテロの危険性からくる出動要請であるのに(だからレイバー出せやという命令も大げさだけど)、暇だという感覚が今から見ると凄く奇異に写る。まぁこれは「テロ」という言葉が例の事件を境に意味合いが変わってしまったんで仕方無いけど、やっぱり不思議っちゃあ不思議。一方で小状況というのは、つまり2課の日常だけど、これがまたメシの心配とかトレイラー運転要員の進士幹泰の奥さんとのやりとりだったりに表される。

だが、本シリーズを見てる範囲で言うと別にそんな事をごちゃごちゃ言いつのる必要あんのかという気もする。だってこれは単に地方公務員の緊張感の無い日常であって、それ以上どうってこともなくないか?この「大状況と小状況」との交錯というモチーフを扱う際に、今まではセカイ系の構造なり、アニメ夜話における宮台真司(僕もいよいよミニ宮台シンジデビューだ)の発言を補助線にしていた。けど、本シリーズを見る限りそういう重層的な構造より80年代の政治ごっこな雰囲気の方を強く感じるし(究極超人あ〜るとか愛国戦隊大日本とか参照項目が貧しいけど)、むしろ政治より今日のメシなりレイバーが空を飛ぶという妄想(第2話「ロングショット」参照)に重点が置かれているように見える。劇場版パトレイバーを除くとマンガもアニメもそこまで重層構造に気を配っていたとは思えなくなってくる。

パト2にしても、課員が生徒で隊長が先生だとすると(そういえば、何故2「課」なのに「隊」長なんだろう。レイバー中「隊」だから?課長は別にいるんだけどな…。)生徒の話を極限まで削りとって、大状況にしたんではなかろか。

ぐだぐだ言いながらも楽しめたんだけど(主に榊原良子の声とか)、本当は押井守の都市観を確認したかったというしょうもない目的は達成できなかった。あんまりそういうところが強調されたシリーズでもないみたい。以前Youtubeで発掘された彼の本シリーズの解説(現在は削除されている)によると、「埋立地で云々」も話題にのぼっていたんだけど、1話から4話で埋立地にいるのは2話しかいないんでサンプルとしはちょっと不適当だよなぁ。