げんしけん(9) (アフタヌーンKC)
前巻で実質終わってたけど今回が正真正銘最終巻。3話書き下ろしらしいので(雑誌では読んでませんでした、もったいなくて)、雑誌派の人は是非。特別装丁版があるらしいけど売り切れてた。残念。最後ということもあってか荻上さんデレ全開。髪を下ろしたところをカラーページで見れて良いというか最高。

で、雑誌派の人から予告されてはいたんだけど斑目先輩頑張った。ええ。とっても。泣きましたよ。あとセリフ抜きだったんでよく分からないですが、咲ちゃんのコスプレ写真を大野さんに渡されそうになる斑目の「いいって!ホラ?春日部さん迷惑じゃん?」「斑目先輩は咲さんの事好きだったんでしょ?」みたいなシーンがもう…。「ははっ」て!笑ってる場合なのか?と。いや、多分そのやりきれなさ、煮え切れなさ故にあのシーンが良いんだろうな。そういう意味じゃあんまりポイントは外してなかったし木尾士目らしく終わったんだろうなぁ。

ただでさえ自分を作品に投影しやすいのだけど(つまり未だに中二病患者)、このマンガはその度合いが凄く高かったなぁと思う。この人は微妙な日常の描き方が上手かったから、誘導されてしまうので。もちろん木尾士目のマンガということで5年生的なアレを期待していたんだけど、それは見事に裏切られた(「アカルイミライ」は木尾士目が書くはずだったんだよ!)。そもそも春日部さんや大野さんがフィギュア化され、アニメ化された時点でこのマンガはとっくにファンタジーに踏み込みだしてたので(きっとここまで読まれなければ、コアなオタク受けする感じにはなったろうけどここまで長くは続かなかったかも知れない)、凄く純粋に読んでた時期はもう終わってた。

でも一つの作品として見れば、願望と事実を上手くミックスして定期的に読めたのはこのマンガだけだったので実に貴重だったような。オタクイズビューティフルな方にもいかず、かと言ってオタク全否定にもよらず(その両方に対する回避行動=ファンタジー化…なわけだが)微妙なバランスで続いたのはやっぱり作者のストーリーテリングの技術が上がっていった事にもよるように思える。この巻の春日部さんと斑目さんの二人で部室にいるシーンとか特に。あれーこんな間を取る人だったかな、昔だったらもっとあっさり淡々とそれ故に薄い感じになってるはずが、何か物凄い印象的で笹原的に言うと「見え方が違う」ってヤツですか?そんな仕上がりになってた。

絵は、だんだんリアル志向からデフォルメ志向に移って行った。これはなーちょっと気になるとこなんだけど。これからこういうのばっかりなの?という不安がちょっとあります。でもキャラが増えても埋もれないってのはやっぱりそういうとこに力の源泉があったのかな。ただスージーとアンジェラはやり過ぎだ。

終わってしまって残念だけど、これ以降も巻を重ねる度に「これはありえねぇ」とか友達と言い合うよりは(そしてその後におかしな自己卑下に陥るよりは)、ここらへんがちょうど頃合かもしれない。次回作も楽しみにしております。これをリアルタイムで読めて本当に良かった。