と、いうわけで読んでみました。いつもラノベばっかり読んでるサイトとは思えませんね。

本書は村上春樹三島由紀夫の関連性について、二人の文章「のみ」を手がかりにしてさぐるというかなり野心的な評論になっています。全体としては、村上春樹の長編小説を三島の小説と対応させながら村上春樹が日本の作家としてどのような位置づけにあるかを定めようとした…のだと思われます。

評論の出来はともかくとして、筆者の、作家に対する考えは中々得難いものだと思いました。例えばあとがきにあるように「批評を論じる側の知的虚栄心を満たす」ために批評をしてはならないこと。また作者はまず作品に耳を傾けるべきであることなどなど…。一年に100冊以上読書するのは、はてなダイアラーでは珍しくないですが、そういう虚心にかえってみるのも良いかなぁ思わされます。

さて、肝心の内容ですが。村上春樹を日本の小説家として位置づけようとした見取り図までは筆者の思いのたけに感じ入りましたし、「風の歌を聴け」と「人間失格」との相関関係を詳らかにするまではなるほど面白いなとも思えたのですが(特にかの小説で何故「二」と「三」が頻出するのかという点は確かに鋭い)、それ以降は徐々にストーリーと人物配置の類似を追いかけるだけに終始する分析になっていったのは残念。単純に日本人作家としての村上春樹を考えたいのなら斎藤美奈子の「妊娠小説」など良書があるのでそちらを手にとったほうが良いのかも知れない。

ススメテ貰ったのにこんな感想でスイマセン…。ではでは。