良く分からない流れから、昨日は原宿駅近辺を歩いてきた。渋谷区や港区は僕にとって余程の事でも無い限り通り過ぎていく一つの地名だったのだが、今日はその内部まで踏み入ることになったので、どうせなら色々と異文化を知るのも経験だという気持ちで行ってきた。

何となく頭にあったのは渋谷及び港=下流とオタクに厳しい地域という固定観念があったのだが、それは結論から言うと誤りであり、文化的なすみ分けがなされている地域というのが正解に近いように思った。

地理的に大雑把な整理をしてみると原宿近辺は下流に優しく、表参道の道路沿いはブランドコンシャスなおじさん達が主なお客であり、南青山や代官山の裏側はファッションコンシャスな人々が楽しむ場所というイメージ。それともう一つ原宿の裏側には特殊なエリアが存在しているということだったが、今日は行かなかったので良く分からないい。

何かぶらぶら歩いて見たりした印象としては、原宿は中高生が多いのでおいておくにしても、その他のエリアにおいてはかなり特殊な身体作法を要求される。ことに興味深かったのは南青山や代官山近辺なのだが、まず人々の服装に対する気の遣い方がサンシャイン60通り歌舞伎町一番街とは異なっており、これは僕の被害妄想なのだが、妙なドレスコードを感じ取ってしまう。つまりダラダラした格好をするには心理的な障壁が高い(身体作法+緊張感)。次には、要するにここには服屋しか無いということであり、当然そこに用がなければここにはこないということで、つまり用があったわけだが(僕が、ではない)、総じてこの近辺の店内は静謐な空気が保たれており、バカ話をしながら買い物を楽しむというより(発話の規制)、その店やブランドの製品を吟味する場所であるというわけだ(視覚と触覚の酷使)。また当然だが地面に寝ることもベタ座りもコードを無視すれば出来ない事もないが、どうも池袋駅付近や歌舞伎町ほどには一般的な行為ではない。無論、それらの地域でも推奨はされていないが。

服について。僕の場合、服を評価する基準は耐久性及び機能性と値段とのかねあいで決定される。つまりそうでない服は初めから目に入ってこないのだが、この地域ではそうした価値観は否定されている。今日入ったある店では、ウニクロの10倍の値段のタグが付いたシャツが販売されていた。またある店では靴流通センターで購入できる価格の約5倍で、スニーカーが売られていた。やりきれない。行く機会は相当限定されているが、また歩く機会があったらウニクロの10倍である理由を小一時間問い詰めてみたい。

その他。面白かった事のいくつかに「店員の人がショップコンセプトを遵守している」というのがあった。

というのも、南青山近辺を歩いていると「いつ、どんな機会に着るのか見当が付かない服」を売っている店がいくつかあり(もちろん機会がある人には重要な意味を持つに違いないわけだが)、店員の人も当然コンセプトに則った服を着ている。だが、僕としてはそこにどんな含意があるのか知るよしもないので軽くコスプレしているようにしか見えない。そして、次こそ大事なことだが彼らはコスプレーヤー程には自らの衣装に対して「ありえなさ」を感じていないように見える。まず平然としている。次には商品説明をしてくれる。そしてあまつさえこの僕にそのようなコスプレすれすれの衣装を推薦してくる。コスプレの場合には、もっとテンションが高く保っていないと着れないはずのものを普段着として着ている。そしてそのコンセプトを生真面目に守っている。そこが、オタ系のレイヤーさんの自嘲気味な雰囲気とは(ベタにコスをしている人もいる、それはそれで楽しいはずだ)隔たっており、その静かな自信の源泉、つまりコンセプトをさも当然のように守りきれる自信の源泉がどこにあるのか聞いてみたかったが質問が長すぎるのでやめた。

もっと言えば、この界隈は服オタクエリアなのかも知れない。また、そうしたコードが流通しているので彼らもそうした服を着る事が出来るし、また涼しい顔で接客出来るというわけだ。オタの場合にはコミケにおいてハイテンションでコスプレをするが、彼らは南青山においてフラットな気持ちでコスプレをしているわけだ。

その後、服オタの人に以上のような妄想話をした。あと「やはりヒルズ系の人もああいうところで服買うんですか」という話をしたら竹中直人(なんたらかんたらという日本のブランドが好きらしい)が歩いていたりはするらしいが、基本的にヒルズ族の人は六本木ヒルズの下の階に世界のブランドを集めた場所があるらしくそこで買い物をしているらしい。まぁそのへんは良く分からない話ではある。

何だろ、あと思った事としては人間の質もゾーニングされてるので僕みたいな人は絶無だったこととか、ここにゲーセン置いても儲からないだろうなーとか(実際テナント料とか凄いみたい)、僕はどうしてもオタクなのでアキバや池袋との比較を始めてしまうのだが、僕のようなファッションリテラシーの皆無なオタがここにいて浮くのと同じくらい、オタ系リテラシーに欠ける服オタの人がアキバ及び池袋を歩いてみたところで、身体作法や身なりにおいて多少戸惑うだろうな、などなど。

曇り空で寒くてしかも背景から遊離した服装をしていたので、池袋に戻って二郎を食べてジュンク堂に行ってラノベとか買って帰った。面白い経験だったけど、コストの面での敷居が高いサブカルチャーなので(それはハイカルチャーな気もするけど)、服オタにはなれなそうだ。