砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

もう旬の時期は過ぎてしまったけど。
ネタバレアリマス。

あらすじ

生きるために「実弾」を欲する少女と、かたや無意味な「空想的な弾丸」を打ち続ける少女。「田舎につくった方がいいと都会の人が考えるすべてのもの」がある町、戦場で彼女達は生きている。

感想

とか何とかまとめてしまった。この作品は短編ですぐ読み終わってしまいます。それと、激しく私見なのですが桜庭一樹さんの作品のエッセンスの多くが詰まっていると思うので、とりあえずこれを読んでみて、その後、気に入ったのなら他の作品を読み進めてみれば良いのではないかと。というのもこの作品を読めば、「少女」という存在に対する二つの見方がはっきり分かるから。一つ目の見方は、若いくせにもう社会はこんなもんだと見切りをつけつつ、直接的にただ生きる、という選択を採る少女に端的に現れている、あきらめとか、諦念とかを抱きつつ精神的にひきこもるという方向性。それに対してもう一つの見方は、これからの事を一切考えない「ふり」をして、ただ「今ここ」だけを追求する方向性。これもまた、夢を見続けることで精神的にひきこもる事を選択するわけですが。どうやら桜庭さんは、少女にとっては人生そのものが戦場で、そこではひきこもることが「とりあえずの」選択肢であるようです。こういうモチーフは他の作品でもところどころ使われていますが、この作品が一番はっきりしていると思います。後味が悪いのですが、今のラノベ読みがこの世代の女の子なはずもないし、むしろ少女のバラバラ殺人くらいの猟奇ネタでひっくり返るってこともありえない、と思ったので、これは桜庭一樹の入門書で良いのでは。大体一時間半くらいで読み終えました。

余談

どうもこの本に限らずどうも作者の本は宮台的というか東浩樹的な雰囲気を随所に感じます。それも社会学ではなく、サブカル寄りB級アカデミズム(造語)の雰囲気、ですが。どうもそのあたり若干無作為に挿入し過ぎてツライ時もあり。まぁそういう見方をたった二人に還元して捉えるのもどうかと思いますが。