ぼくと魔女式アポカリプス (電撃文庫)

ぼくと魔女式アポカリプス (電撃文庫)


あらすじ

 これは、ぼくと彼女の前に突然現れた、ひとつの大きな「連鎖」の話だ。クラスの空気でしかない少女の告白という何の変哲もない「普通」から生まれる、無意味な「特別」の連鎖―。錆びた魔術師達。種の復活を賭けて行われる、人間を代役とした争い。それらの存在を知ったぼくの横で、魔女種族の代替魔術師となった彼女は戦う。そして、戦うために行い続ける。哀しい微笑で、哀しい自傷を。「普通」と「特別」が混濁し、ぼくたちの眼前に残ったのは、ただ無慈悲な―
(文庫本のあらすじより引用)

かんそう
いつも読ませて貰っているウィンドバード::Recreationさんの上半期ベストラノベ発表というエントリー(http://d.hatena.ne.jp/kazenotori/20060701)で見て気になって買った。「並の刺激に飽きた方におすすめ」とあったので、感覚器官がマヒ気味の自分にはちょうど良いと思って。先に書いちゃうと僕はこういう鬱っぽいのが好きです。

導入部は普通。クラスで浮きがちな「ぼく」こと宵本澪が砧川冥子という女の子に告白されるというボーイミーツガールの典型的な形でスタート。世界設定の説明もすんなりと分かりやすく、微妙にエロ(後半はもっと…)なのもツボ。水瀬さんの作品は初めてだが、一人称語りも慣れている感じですーっと読めてしまう。僕はこの一人称語りで以下に笑えるかを良い悪いの基準としているので、そういう点でもこれは安心して読めるなーなどと的外れな感想を抱いた、少なくとも序盤は。

しかし、中盤以降物語は重苦しさを急速に深める。?そして幼馴染の微妙な変化には一体なんの意味があるのか?クラスメートは果たしてドルイドなのか?冥子の父親に対する態度は何なのか、そして魔術の反動によって一体主人公には何が起きるのか…?

痛い。キャラクターは精神的にも肉体的にもどんどん傷ついていくし、誰かが犠牲になるのはいやらしいくらいに見え見えなのだがそれでもページをめくるのを止める事が出来ない。乏しい経験値から言って、ラノベ×鬱と言えば「砂糖菓子は弾丸を撃ち抜けない」くらいしか思い出せないが、初めから死ぬキャラクターが分かっている方がまだ(?)安心というもので、こちらはロシアンルーレットの如く誰が死ぬのか分からないまま徐々に恐怖だけが自分の中で広がっていく感じ。主人公もいつものお軽い調子から徐々に鬱モードに移行。冗長な会話も少なくなり、呟きが増していく。

終盤になるとハルヒキョンのように「ポニーテール萌えだったんだ!」みたいな冗談をかます余裕すら消えうせる、究極の展開が…。

恐らくこのラストが一番衝撃だった(?)故に色々物議を醸す作品になったのかも知れません。出たのが今年の2月ということもあって先賢達が色々な立場で既に論じ合っているわけですが、どうなんでしょう。僕としては、まず読みモノとして面白ければ良いので(少なくともラノベに関しては)、その点はかなりポイント高くて、それ以上どうこうとは思いませんけど、やっぱりそれだけで終わり、というわけにもいかないのかなぁ。

良くも悪くも、自分の立ち位置みたいなものを明らかにせざるを得ない、そういうものを迫る作品ですね。別に公表するかしないかは兎も角自分に対して(と言って逃げてみる)。

イラストのイメージに反してかなり人を限定するかも知れないけれど、ただのラノベに飽きてしまった人はこれを読むしかないですね!ただ電撃レーベルで良く出せたなぁと思いますが(デビル17もそれに近い)…。直接的な表現はそれ程無いにしても、リストカット・性倒錯的要素もバンバン出てくるなどかなりダークな色合い。

どうしようもなく傷つきたいなら、コレを読みましょう。ラノベの話題に食いつきたいならコレを読みましょう。鬱ですか?読んで下さい。もっと鬱になれます。

関連
Minase Hazuki Official site
水瀬葉月さんのオフィシャルサイト。「ぼくと魔女式アポカリプス」紹介用のFLASHがおいてあります。作品の雰囲気を掴めると思うので是非どうぞ。
ENTER :P
イラストの藤原々々(ふじわらわらわら)さんのサイト。
学園異能とは - はてな