デトロイト・メタル・シティ (1) (JETS COMICS (246))

デトロイト・メタル・シティ (1) (JETS COMICS (246))

あらすじ
気弱な青年、根岸崇一は渋谷系音楽を愛好するごくごくノーマルな男子。しかしその裏の顔は、人気・極悪メタルバンド「デトロイト・メタル・シティ」のギターボーカル「ヨハネ・クラウザーⅡ世」だった。卑猥な歌詞、最低最悪のメンバー、そしてメタルオタク事務所社長社長に毎日強要されるライブアクトというストレスと戦いながら、ポップ音楽を歌う日を夢見るというギャップを描いたギャグ漫画。

かんそう
ギャグ漫画として、面白かった。徹底してメタルオタをネタにするところからくる現実との落差が笑いの原動力なんだと思う。というか徹底して落差の話だよな、このマンガ。確かにちょっといくらなんでもメタルがステロタイプに過ぎるかな…と思ったけど自分の事を描かれなければ大して気にもとめないカリカチュアに、自分の厚顔さってものもちょっと感じいってしまった。

そして、メタルが好きならこれは読まないほうが良い(はじめからメタルがネタになっている今の我々には「メタルが好き!」というのはなじみの無い感覚かもしれないけど)。あまり音楽に執着が無い自分が長々といってもつまらないのでちょっと他人様の文章を借りてくる。

ただ、メタル界というのは、「メタルとはかくあるべき」といった美意識に固執し続けているような所があります。枠組みを外れる、という事に対して、過剰な拒否反応をおこす様な面があります。

(中略)

メタルを奏でる人々の大半が「真面目な人たちであるから」に起因しているような気がします。映画の中でのロブ・ゾンビの発言でもあるように「メタルファンは、死ぬまでメタルファンなんだ。パーマネントに『あ〜○○年の夏はSLAYERをよく聴いたよな〜』みたいな聴き方をする奴は一人もいないよ」といった具合に、メタルというジャンルは真面目で頑固な人々がかなりのコアなユーザーを占めるジャンルであるということがわかります
S-killz to pay the ¥. - あの夏のSLAYER 〜「メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー」〜より一部改変、引用。

これはメタルドキュメンタリー「ヘッドバンガーズ・ジャーニー」について書かれた文章だけどもちょっと関連してそうだったので借りてきた。引用したことが8割くらい当てはまってるなら、このDMCってマンガはある意味メタルオタクにとっての冒涜かもしれない。オレも含んだ部外者は大抵この類にケチをつける人がいると「あーなんでそんな細かい事でケチつけるんだよ」と思う。正直自分も別にメタルというジャンルが滅んだってギルティギアの元ネタが無くなるくらいだろうと、無意識状態では思っているはずである。大概に笑ったしねこのマンガ。「こういうメタラーいるぜー」みたいに。実際にはステロタイプが頭に宿ってるだけだし、もうちょいシャレたファッションの人もいるんだけど、何故かステロタイプがしっくりくるんだなぁ。

しかしながら、ジャンル偏愛者にとっては細部にこそ(外から見るとファッションしか見えないけど!)、宿るものが某かあるわけで、それをギャグのネタにされたんじゃあ「これはメタルを馬鹿にしてるぜ!」とか「一部のメタルをダシにして知らない人が誤解するだろうが!」(80年代のメタルで止まってるじゃん!)という反発は当然食らうでしょう。何かまんまオタクのステロタイプ拡大問題とも重なる話ですね。

メタルオタクで無いにも関わらず「これあんまり面白くない」と言ったオタクが周囲に何人かいたけど、そいつの完成感性は結構正しい。

まぁそういった一方でこれを読める人もいると思う。典型的なのはメタルというジャンルに執着が無い人かまたはメタルと並列して何か音楽(または別の何か)がある人なら全然大丈夫。むしろネタとして存分に味わえる。知識があるのが仇になるか、または楽しめるかはその人のメタルに対する態度によるんだけど。リトマス紙みたいなマンガだねこれ。

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発売当日の様子。

>デトロイト・メタル・シティ - Wikipedia