あらすじ
エターナルアイドル(無限回廊)に操られた硝子のクラスメイトによって危機に陥る直川君子。そして、城島晶は自己をコントロール出来ない硝子に戸惑い、一瞬の虚をつかれ彼女を連れ去られてしまう。舞鶴蜜と直川君子の失われた過去、そして義理の姉妹となるにいたった舞鶴と速見殊子の感情の軌跡とは…。やっぱり鬱はイヤだな、前後編の完結版第4巻。

かんそう

ずっと暗ーい雰囲気が漂っていたこのシリーズだけど、この巻は少し前向きに終わった。以下ネタバレ反転。前の巻で直川君子が硝子のクラスメイトに誘拐されてしまって…あぁ今度はこいつが死ぬか虚軸になってしまうのかなぁと思いきや、今回は生きて帰ってくるし2巻で無限回廊に取り込まれたひめひめも最後は学校に復帰。凄い前向き。

話の筋としては無限回廊が消失してしまって、え、これからの敵は…などと思わなくもなかったし、もうこれで終わりにしてしまっても形としては綺麗のような気もした(お父さんはどうなるのか?お母さんは?「失敗作」っていう言葉の意味は?などなど回収すべき伏線はあるのだろうけど)。

そして鬱だ鬱だ…と言った割にはページを追うごとにそういう空気はどんどん薄まっていった。やはり、鬱な空気をひたすら持続させるのは存外難しいというか、いくらネジのぶっとび具合で(ボクは感情が欠落してる、のような)グイグイと迫られても、それは単に欠けているという風にしか映らなくなってしまうし、表現としてのありがたさも薄らいできてしまう。そんな印象。この本、そういう表現が多用されてるけど(〜の欠落、無〜)ちょっとインフレ気味になってるのかも。

というわけでストーリーと個人的印象からか、より「らしい」ラノベになってるなと思いました。

だが、もう本筋が問題にならないくらい舞鶴蜜の過去のストーリーがこれまで3巻使ってずっとツンケンしていた「タメ」というか読者に対する焦らしを一掃するかの如くな究極のデレデレがこの巻のメインディッシュ。別に甘くは無いんだけれど。これ書きたかったんだろうな…などと冷静な分析も読んで一週経っているからこそ出来るツッコミにしか過ぎないのであって、今まで逸る筆を押さえに押さえたであろう作者にいいようにころがされた感じでもう…。ニヤニヤしっぱなしであった。「タメ」があったからこそ、過去話が効いている。

余談としては佐伯ネア先生が今回は大活躍。巻頭カラーページはまたプリン王国の話。

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