ヨイコノミライ完全版 4 (IKKI COMICS)

ヨイコノミライ完全版 4 (IKKI COMICS)

せっかくテヅカ・イズ・デッドを読んでいるにも関わらず美学的言辞というか印象論を超えられないのが我ながら心苦しいのだけど。

最初はあまりに露悪的過ぎて逆にネタとして安心して読めたのだけど、最終巻に至ってキャラごとの割り振りがはっきりしてきて、結構かっちりとやってたんだなと、普通に感心したりとか、製作サイドから自称評論家に対して言いたい事全部言いますみたいな切実さもあり。あとラスト重視しちゃう派の自分としてアレはナイスだと。

三段上手く落ちて、かなり印象に残る作品となった。良いと思います。何だろうやっぱりオタク論好きには好餌だからかなー。

あと。具体的にイヤな終わり方をしてしまった2人を除いてみなさん宙吊り状態だったが、オレ的には自称評論家野郎であるところの天原の存在が気になった。この人は、女子の社交辞令を真に受けたりとか、自分がクリエイト出来ない事を棚に上げて人の作品をディスリスペクトしたりとか、そしてどうも根源的にはただスケベ根性がうごめいているだけという気の毒な特性を兼ね備えてしまっているオタなのだけども、どうもあんまりキライになれなくてですね。

それは自分の似た部分を否定出来ないのと同じだろうと言われればそれまでですし、それもあるんですが、何かああいうダメな部分はいつまでも抱え込みそうなものなので、それを全否定するんではなく、どう向きあうかが大事だな、みたいなのがどうも最近のモードとしてあってそれとフィットしたんだと思うんですが。

作品の役回り上はもちろんあいつがおいしい思いをして良い筋合いはないのだけども、ラストで平ちゃんがあんな感じになることも含めて考えて見れば、作品全体が天原の存在を否定しているわけでは無いと思うんだけどどうかなぁと。ヌルイですか。だけど、どのキャラにも暗かろうが明るかろうが先がありそうな余韻を残したところがこの本の美点だとオレは考えるので天原も否定されたとは考えたくないのです。

絵とか。これもここ最近のモードなのだけど、写実性より描き手の切迫感が伝わって来た方が良いと思えちゃうんだよなぁ。ソラニン 1 (ヤングサンデーコミックス)という作品があってこれも結構面白かったのだけど、絵が上手いのが逆に全身で没入するのを妨げられた気がした。それは完全に悪い読み手の問題でしか無いのだけど。

どちらにしてもこういうテーマを採用しなかったらここまで没入しないであろうこと、オレの読み方が自分に引き受けて色々と考えてしまう事、絵の話に関してはむしろ荒さや線の勢いに価値を見出しがちな事はいつもやって良いとは思ってないし、いつもは出来ない。

そういうエネルギーを要求する作品であった、という事で。