ミミズクと夜の王

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

オフビートなファンタジーって最近増えてるんだろうか。以前読んだ戦う司書と恋する爆弾 (スーパーダッシュ文庫)もファンタジーなのに、低温体質な文章だったしなぁ。

というわけで絵がついてない電撃文庫を初めて読んだ。結構面白かった。ミミズクの緊張感の無いしゃべりと周囲の痛ましい状況がどこかしら悪意を醸しだしつつ全体として綺麗にまとまってて何か安心して読めた気がする。まぁラストは誰か○○んじゃないかと思ったんだけど、気持ちの良いラストでそこもいい。

それと三人称で語られるラノベというだけで何かオーケーしたくなる。何故か。僕の場合、ラノベ読書時間には「一人称酔い」みたいな現象があり、要するに主人公のあーでもないこーでもないというアレににくらくら酔ってくるという見当識失調で、悪酔いの場合がままあり(上手く酔えたらそれはそれでいいんだけど…)、そうした時間が長期に及ぶと一人称でない作品に対してアレルギーを起こしたりする。というわけで、そのあたり上手く配分してくれる人はいいなと思ったりします。

「安い話」を書きたかったという作者の話を真に受けるわけではないけど、確かに全体として「語られること」への頑なさを感じさせる作品である。ヨーロッパの童話風の世界観をとりつつ、動いているキャラクター達の感情表現は妙に生っぽくもあり、そのあたりで奇妙な均衡を保っているところがなんともいえない魅力。それに加えて、ミミズクのストレートな欲求が、力押しなのだがなかなか響いてくる。作品の統一感を大事にするタイプの人なんだろうな。その反面細部にいたるまで過剰な書き込みをする作家でもないからキャラ萌えなりイラストというフックを重視する人には読めない、または楽しめない。

短編なのでとりあえず次回作が気になる。次はイラストついちゃうのかなーそれもとハードカバーかな。

蛇足。絵が付いていないのでラノベに見えないが、個人的にはラノベ的な文法をつきつめるとこんな感じになるんではないかと思ったりしている。